創刊号 vol.01

日本橋文明論 第1講 ライオンは眠らない。

2014年春、生誕100年を迎える日本橋三越のライオン像が注目を浴びている。関連アイテムとして総計3000頭以上ものライオンが登場するなど、何やら忙しそうだ。

しかし、そもそも、なぜ百貨店の入り口に一対の(2体の)ライオン像が置かれているのだろうか?そこには、いくつもの文明が交差する、知られざる物語が隠されていた。

ライオン像のモデルが、ロンドンのトラファルガー広場にある4頭であることはよく知られている。実は、欧米では、銀行や広場の入り口に置かれることが多いのだという。

古(いにしえ)より守護獣として崇められてきた百獣の王は、眠るときでも目を閉じないで見張り役を全うするといわれ、強さの象徴と魔除けの役割を担ってきた。

この「ライオン信仰」は、世界各地に拡がりエジプトの「スフィンクス」やインドの「グリフォン」などを生んだ。日本には、飛鳥時代、「獅子」として伝わり、神社に置かれている「狛犬」になった。

ところで、「狛犬」を犬の一種だと勘違いしている人はいないだろうか?「狛犬」は架空の動物。もともとは「獅子」と一対で置かれていたが、いつからか狛犬だけになったと言われている。

つまり、ロンドンのライオン像も、神社の狛犬も、ルーツは一緒、聖なる守護獣というわけだ。だからなのか、ライオン像に跨ると、願いが叶うという都市伝説は、いざやるとなると、ちょっと不謹慎だし、かなり恥ずかしい。(もっと言えば警備員に取り押さえられるかも…。)

でも、真摯な気持ちでライオン像に一礼し、仕事や恋の願いを心のなかでお祈りするくらいは、ありかな、と思う。

この先の100年もライオン像は、眠ることはないだろう。いまこの時も、日本橋で生きるすべての人々を静かに見守っているのだから。

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日々乃 喜績 hibino kiseki
1971年神奈川県生まれ。某企業で広告宣伝と戦略PRを担当する傍ら、さまざまな文化と場面を創る「仕掛け人」の顔を持つ。今年3月には、企画・協力した小説「病名のない診察室」(著者 豊田美加/ ワニブックス刊)が刊行された。
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