2014年7月号 vol.03

日本橋文明論 第3講 日本橋で朝食を

日本はいま空前の朝食ブームを迎えている。パンケーキやクレープの世界的名店がこぞって進出し、平日の朝にもかかわらず長い列ができている。最近ではグラノーラの専門店までオープンし、人気を博しているという。かつて朝食がここまでもてはやされた時代があっただろうか。

朝食の歴史を紐解くと、普段あまり考えることもなかった人類と文明との意外な関係が見えてくる。

古来、朝食とは質素なものであった。

むしろ、朝食という概念自体がなかったとも考えられている。歴史上人類は朝食に対して保守的であり、決して一日の最高のご馳走を朝には食べなかった。しかし労働環境や生活様式の進化は、「朝食」に付加価値を持たせるようになった。

働くために食べるのか、食べるために働くのか、もしくは、食べることを楽しむのか、価値観は多様化している。近年では、ダイエットや健康維持のために朝食を抜いた方がいいと提唱する識者もいれば、「朝食は王様のように、昼食は王子のように、夕食は貧者のように」という表現を用いて、朝の栄養摂取の重要性を説く学者もいる。どちらが健康にいいかという議論は、専門家に任せるとして、文明論的観点から述べると、現代は、朝食をどうするか? 何を食べるのか? という選択肢が驚くほど豊富な、稀有な時代だということだ。

さて、いま東京で最も美味しく、優雅で、贅沢な朝食が日本橋にある。

日本唯一の6ツ星ホテル「マンダリン オリエンタル 東京」では、どのレストランでも、記憶に残る朝食が供される。

人は朝食に何を食べるのか、いつ決めるのだろう。起きてから何となくいつものものを食べる人、前の晩から簡単な準備をしている人、あるいは一週間前から綿密に計画を立てているというマイスターがいるかもしれない。

特別な日には、王様のように恭しく、澄み切った東京の朝を見下ろしながら、日本橋で朝食をとるという計画を立てるのも、日本橋文明に許された特権のひとつではないだろうか。

マンダリン オリエンタル 東京 38F
オリエンタルラウンジ
中央区日本橋室町2-1-1
7:00~25:00/ティーサービス 12:00~17:30
☎ 0120-806-823(9:00~21:00)
http://www.mandarinoriental.co.jp/tokyo/fine-dining/oriental-lounge/
ご感想・ご要望やエピソードをご紹介いただける場合は、kiseki@nihombashimo.jp までください。
日々乃 喜績 hibino kiseki
1971年神奈川県生まれ。某企業で広告宣伝と戦略PRを担当する傍ら、さまざまな文化と場面を創る「仕掛け人」の顔を持つ。今年3月には、企画・協力した小説「病名のない診察室」(著者 豊田美加/ ワニブックス刊)が刊行された。
ニホンバシーモ 2014年7月号 vol.03