2014年7月号 vol.03

日本橋 街大學 ニホンバシーモ・ビジネス楽部

Lesson.3 エーデルワイス・ステンレス刃物鋼
約60年間、主婦に指示された切れ味
1.サイズ
同シリーズでも女性、男性、プロ向けなど多彩なサイズバリエーションを展開
2.ロゴマーク
発売から、時代とともにデザインが変化している
3.硬さ
ステンレス鋼の中でも特に硬く切れ味が良い。柔軟さもあるため刃こぼれしにくい
4.柄
包丁の柄は黒が基調だが、最近は色、素材とも種類が豊富

ニホンバシーモ・ビジネス楽部の第3回講義は、
株式会社木屋企画総務部の石田克由部長に、日本橋 街大學講師のマッキー牧元さんがお話を伺います。
お読みになったあと、改めてご自分がお使いの包丁を握ってみたくなるに違いありません。
今回は、そんな包丁の奥深~いお話です。

※フリーペーパーではダイジェスト版ですが、ここでは対談の全容をご紹介します。

情熱から生まれた、画期的ステンレス包丁
マッキー
(聞き手)
木屋さんの主力商品のステンレス包丁エーデルワイスには、いろいろ種類がありますね。
石田 そうですね。たとえば、包丁本体と皆さんが握るハンドル部分の間に「つば」が付いているものと、付いていないものがあります。
マッキー 値段も全然違いますね。つば付きのほうが倍くらいします。その違いはどこから来るのですか。
石田 高品質の鋼材は、別の金属を溶接しようとすると、材料自体にストレスがたまってすぐに割れてしますのです。そうならないよう、溶接の温度や付ける方法を変えなければいけないので、どうしても高くなるのです。
株式会社木屋 企画総務部部長 石田 克由さん
マッキー 使用する際に、つばの有る無しでどんな違いがあるのでしょう。
石田 一番の違いは、つば付きのほうがより耐久性を増すのです。ハンドルの付け根というのは包丁のウイークポイントで、つばを付けることにより汚れがハンドルのなかに入りにくくなるのです。
マッキー 劣化しにくくなるのですね。
石田 それと、つば付きのほうが若干重くなりますから、持った時に手に伝わるバランス感が良くなります。
マッキー こうして2つ持ってみると、確かにつば付きのほうがバランス良く感じます。切りやすいといいますか、切る動きがうまくできる感じがします。ところで、エーデルワイスは、どのような経緯で開発されたのですか。
石田 現会長の加藤俊男が昭和25年に入社したころ、ステンレス包丁には粗悪なものしかありませんでした。そうしたなか、大学で応用金属を学んでいた加藤は「特定の成分でつくれば、絶対に良いものができる」と確信していました。そこで、当時の大手特殊鋼メーカーをあたったのですが、どこも持っていませんでした。
マッキー 加藤さんが求める成分のステンレス鋼がないわけですね。
石田 トン単位で注文を出してくれなければ作れないというのです。包丁1本に使うのは250g程度ですから、トン単位だと10年分以上のストックを抱え込むことになります。日本がだめならと、ヨーロッパの情報を集めた加藤は、オーストリアのメーカーがほぼ自分の思い通りのステンレス鋼を持っているのを突き止め、交渉に行きました。そこで話がまとまって、都内の協力工場で作り上げてみると、思った通り非常にいい包丁ができたのです。そうして発売されたのがエーデルワイスです。昭和30年ごろのことでした。
約60年間、主婦に支持された切れ味
マッキー では発売から60年になるわけですね。初期のころのエーデルワイスと現在ではだいぶ違いがあるのですか。
石田 平成14年後半のエーデルワイスシリーズから、ステンレス鋼の成分を大幅に変えました。以前よりさらに良くなり、現在はすべてその進化したステンレス鋼を使っています。
マッキー 売り出したころの話をもう一度お聞きしたいのですが、発売当初の売れ行きはいかがでした。
石田 実は、発売の数年前に三越さんが新館を建設することになり、その建設場所に店を構えていた当社は、移転の話を受け入れて現在の場所に移りました。それがきっかけで三越さんから「うちで売ってみませんか」と声をかけていただき、販路がデパートへ広がったのです。
日本橋 街大學 講師 マッキー牧元さん タベアルキスト/味の手帖取締役編集顧問・主筆
マッキー それまでは、デパートでの販売というのは一切やっていなかったと。
石田 まったくやっておりませんでした。三越さんの本店に入らせていただいたのが最初になります。それを皮きりにほかのデパートさんにも入らせていただくようになり、北海道から九州までデパートのマーケットが増えました。
マッキー なるほど、デパートへの販路拡大とエーデルワイスの販売時期が重なったということですか。そうして主力商品となっていったわけですね。
石田 最初は1シリーズでスタートしたエーデルワイスもだんだん種類が増えていき、現在は、ハンドルの素材が金属であったり、天然木であったり、またサイズも相当増えています。いずれにしても、エーデルワイスシリーズは、間違いなく私どもの一番のおすすめ商品です。
マッキー 包丁として、これに勝るものはないということですね。先ほど拝見したら、女性用の少し小ぶりで軽いシリーズもありますね。
石田 女性を意識したエーデルワイスシリーズで、包丁のマーキングをピンク色にしたり、ハンドルも女性の手になじむよう、少し小ぶりで丸味を帯びたものにしています。同じエーデルワイスシリーズでも、男性が使うもの、家庭で女性が使うもの、プロのシェフが使うものなど、形も大きさもさまざまです。
マッキー やはり、売れ筋は家庭用になりますか。
石田 圧倒的に売れるのは、一般家庭で女性にお使いいただく包丁になります。
マッキー 三徳包丁といわれるものですね。
石田 はい。当社では鎌形と呼んでいますが、このタイプが一番出ますね。
良い物の見極めが、日本橋で働く者の使命
マッキー 創業は寛政四年(1792年)ということで、これまで約220年続いていらっしゃいます。そのなかで、ステンレス鋼のエーデルワイス発売から60年ということは、創業から160年くらいに大改革があったということになりますね。
石田 エーデルワイスの発売以前は、当社も一般的な刃物屋さんと同じように、刃物専門店として卸しを中心にしていたわけです。それが、包丁については、独自に材料を調達し協力工場で作って販売するようになり、オリジナル商品を持つようになりました。
マッキー エーデルワイスが出たことで、会社として大きく変わったわけですね。エーデルワイス自体、改良されたり、さまざまに商品展開されていると伺いましたが、新しい商品もお作りになっていますね。
石田 会長の加藤には、ステンレス鋼の限界というのも分っていましたから、もっといいものはないかと探し求めていました。そんな時に粉末合金鋼の存在を知り、ある会社にアプローチして材料を入手することに成功したのです。
マッキー それで、新たな包丁を作ったのですね。
石田 それが、今までにない硬さで、従来のやり方だと割れてしまってできないのです。包丁の材料には、硬さと同時に刃こぼれしない粘っこさが必要なのです。それでも、試行錯誤を繰り返し、加藤は作り上げたのです。完成した粉末鋼の包丁は、口コミで広がって現在はかなりの売れ筋になっています。材料が硬いので切れ味が持続するんですね。エーデルワイスに使うステンレス鋼の硬さも、包丁用では世界でトップクラスです。
マッキー お話を伺っていると、加藤会長の金属に対する高度な知識とともに、深い愛情というものを感じます。そうした愛情、情熱が、木屋さんを進化させてきたんですね。今日は、日本橋街大學ということでお話を伺ってきましたが、木屋さんも本店がコレドに入られるなど、街がどんどん変わってきています。新たなお客さんも来るようになった日本橋について、今後への期待も込めてどう思われますか。
石田 江戸の日本橋というのは日本最大の繁華街で、商いの中心だったわけです。歴史的に、日本で商売をやるうえでは最高の場所だったのです。せっかくそういう場所で商売をさせていただいているわけですから、我々も良いものを見る目をもっともっと磨き、いい道具を見つけ、また作って、ここから発信していかなければなりません。我々にはそういう使命があるのです。逆に言えば、これからも、そういうことがきちんとできる場所、やりがいのある場所というのが、やはり、この日本橋なのかなと思っています。
木屋・石田部長の仕事の教訓 日本橋で働くなら、物を見る目を養うべし
日本橋木屋本店

中央区日本橋室町2-2-1 COREDO室町1F
TEL:03-3241-0110
10:00~20:00(1月1日休み)
http://www.kiya-hamono.co.jp

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