2017年5月号 vol.17

大宮エリーのニホンバシタノシー!

その4 猫を探してニホンバシ

 「今回のニホンバシーモは猫でいきます!猫流行ってますでしょ!」と、電話口でいつもの編集者Kさんが言う。電話なのに、いつもの、両手をすり合わすポーズが目に浮かぶのはなぜだろう。「ね、先生!ひとつ、今回は、猫で、お願いできたらと。原稿、どうでしょう?」「あ、猫好きですから大丈夫ですよ」そう言うと、「猫、お好きですか!よかったよかった!では猫にまつわるロケをしてそのあと原稿よろしくお願いします!」と電話が切れた。

 後日、日本橋で待ち合わせをした編集者Kさんと久々に会う。横にニコニコのカメラマンMさんもいる。「今日は、あいにくの雨ですみません」いえいえ、大丈夫ですよ、と言ったが、なんと二人が企画した、猫特集のロケは、“猫がよくいるスポットにいってみる”というゆるすぎる企画だった。路地裏につれていかれ、編集者Kさんがきょろきょろしながら、ネコを探す。「あれ?いつもいるんだけどな」「やっぱ、雨だからいないですかねぇ」いるわけない。土砂降りだ。「どっかで雨宿りしていないかなぁ」カメラマンMさんは、路地裏を走り回っている。結果、「この辺に、いつもは、いるので、、だから…お願いします!」と猫もいない路地裏で、猫がいるとイメージして何もいないのに戯れるという、とてもシュールなロケになった。「あ!いた!」(いないけど)「ほらほらー、おいでー!」(いないけど)それを、「素敵です!かわいい!」カメラマンMさんがニコニコとファインダーを覗きシャッターを押しまくる。編集者Kさんは「いい!」と満足げに頷いていた。いろんな猫スポットに行った。

傘をさしてしゃがんで猫を探す。神社、蕎麦屋の裏、カレー屋。どこもいない。「まったく、どこいっちゃったんですかね?」という編集者Kに、「あのう、雨の場合は考えていなかったんですか?」と聞いたら、「そうなんですぅ」と眉をはの字にして、わかりやすい申し訳なさ顔を作った。無言になる私をよそにKさんが言う。「で、先生、急遽ね、猫がいないなら、猫が好きなものを探しに行きましょう」といわれ、向かった先は、かつおぶしやさん。 無言になる私に、「エリーさん、猫になったつもりで、猫が、かつおぶしの匂い、いい匂いだニャアって顔してください!」「もっと、くんくんしてください、はい、ああ、ああ、素敵!」とニコニコでカメラマンM。
  • 鰹節大和屋
    中央区日本橋室町1-5-1
    ☎ 03-3241-6551
    平日・土 10:00~18:00
    日・祝休み MAP
最後は「猫のクッキーをうっているカフェがありましたから」と言われ、行くと店の方が、「今日問い合わせきたんです」と困惑顔。申し訳ない。でもとても美味しいチーズケーキとクッキーだった。やさぐれた野良猫のような気持ちが、ブランケットがかかったようにあたたまる。
 帰り道、編集者Kさんが、私に、エリーさん、本当に猫お好きなんですね、というので、「飼いたいんですけどね」と答えたら、いいですよねぇというので、なんとなく聞いた。「まさか、猫とか、かったことないですよね?」すると、さらりとKさんは言ったのだ。「飼ってましたよ」初耳である。ロケの最後で言う話だろうか。名前はなんていうんですか?と聞いたら、こう答えたのです。「ネコです」え?「ネコって名前つけてました」「…」「姉が、シャーロットって呼んでいたんですが、私が、ネコ、ネコって呼んでいて、まあ、私が勝ったというか」ネコ好きにもいろいろあるんだなぁ。
  • おやつのこぼく
    中央区日本橋浜町2-52-5
    ☎ 050-5277-5702
    火~土 11:00~18:00
    日・月休み MAP

大宮エリー

大阪府生まれ。作家、画家。
主な著書は、『生きるコント』、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』。
福井県 金津創作の森にて個展を開催中。6月11日(日)まで。

ニホンバシーモ 2017年5月号 vol.17