2017年9月号 vol.18

大宮エリーのニホンバシタノシー!

その5 ロンドン特集で呼び出されたが・・・

 今回のロケ地。日本橋の指定された場所はオシャレなゲストハウスであった。こんなところに!という場所にある。小さな間口から入ると中は広々。なんと囲炉裏がある。キッチンもあって、戸棚もある。そこで簡単に調理して、囲炉裏で何か焼いて、他の宿泊者と交流することができるわけだ。

 「でも今回はイギリス特集ですよね?」と私は聞いた。「はい、ここで、たまたまイギリスの方と遭遇できたらなと」にこやかに編集長K。横で丸顔のカメラマンMがこれまたニコニコと頷いている。「たまたまって…」「はい、ブッキングしておりません!」でたー。イギリス人でなくてもニホンバシーモ的に言えば、イギリスっぽく見えればいい。西欧のひとだったら、イギリス人ってことにしてしまえばいいのだ。そういう魂胆は分かる。でも、いるかな、西欧の人。アジアの方がいま受付をしている。ビジュアルが寄り添わない場合はどうするつもりなのか。

 「そういうこともあるかと思い…」とKさんが出して来たのは、小魚のおつまみと、ポテトチップス。ん?もしや…。「そうです!ロンドン名物、フィッシュ&チップス!」馬鹿にするにも程がある。やはり原稿を書かせる立場なのであれば、もう少し作家にロンドンのヒントになるものを与えるのが編集者なのではなかろうか。「あ、怒っちゃいました?」
 袋から、カメラマンのMが「あ、まだこれもありますよ」と小声で上司である編集長Kに渡しているのがロンドン国旗の爪楊枝なのが見えて、腹が立つを通り越して、もうこれはエンジョイしようと思った。台所に率先して行き、皿を出し、チーズを乗っけてそこにロンドン国旗をさそうとしたそのとき、私はふと、何故か、入り口の方をみた。すると!そこに!私は思わず叫んだ。「Kさん!西欧のかた、いた!話して来て!」
 編集長Kさんは金髪の若い男女に走って行く。突進して行く。「ハーイ!」
 若い男女はピザを持っていた。部屋で食べようというところ、いく手を阻む謎のおっさん日本人。「ホエア、アー、ユーフロム」編集長Kさんがバリバリの日本語の発音で英語を話した。すると、「London」耳を疑った。「え?」もう一度彼らはいった。「London」

 結果、さきほどの囲炉裏で少し話をした。彼らが秋葉原にいったり、奈良に行ったり、京都にいったり、実にかなりの行動力を発揮していたことに驚き、そして、ふたりが姉弟で、姉が20歳、弟が18歳だったことも。
 41歳の私は24、5のときに留学中の彼氏を追って、ロンドンに行ったことがあったが、彼の住んでいたアパートの近くに彼女達が住んでいることが判明。
 なんだか即席だけれど心を通わせて、写真をぱちり。
 しかし、あんな若いイギリス人が来てくれる日本、そして日本橋。もっと愛さねば、ね!と思ったのであった。
  • IRORI
    Nihonbashi Hostel and Kitchen
    中央区日本橋横山町5-13
    ☎ 03-6661-0351 MAP

大宮エリー

大阪府生まれ。作家、画家。
主な著書は、『生きるコント』、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』。

ニホンバシーモ 2017年9月号 vol.18